TVアニメ「超時空要塞マクロス」の二次創作を公開しています。
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§8 遠い想い
 教導隊。実戦部隊パイロットの訓練を担当する機関として、敵の戦術・戦技の研究及び実戦訓練において「仮想敵」の役割を演ずる部隊である。
 すでに実戦パイロットとして活躍している者に胸を貸すだけに、高い技量を要求され、当然のことながらその構成員は、各部隊から選りすぐられたエリート揃いである。
 その猛者たちも、第一次星間大戦において三分の二が戦死し、部隊は事実上の解散となっていた。
 統合軍の仮想敵といえば当然、ゼントラーディ軍であり、今回新たに再編成された教導隊に「本物のゼントラーディ人」ドール・マロークス中佐が加えられたのは、もちろん実務上の意味も大きかったが、いずれは広報活動上の目玉に据えようとの統合軍の意図もあった。
 ドールの華々しいデビューの様子は、たちまち基地中に広まった。
 しかも不公平なことに、彼女の操縦技術より破壊力に関する話ばかりが先行して飛び回り、口の悪い者たちはさっそく「ベンダーバスター」だの「女ターミネーター」だのと彼女をあだ名した。
 もちろん、アレクセイは噂の流布にはなんら関与をしていない。が、ただでさえ目立つドールは周囲の注目を集めやすく、彼女の意思とは別に、噂話の方が勝手に尾ひれ胸びれをはやし、辺りを泳ぎまわっていってしまうのであった。
 ドールはそんな好奇の眼差しも無責任な噂も、一向に気にする風でもない。女性隊員たちの間では、そんな姿が「クールだ」と受けて、密かにファンクラブができているという噂もあるが、だからといって友人がいる様子もない。
 この時期、基地ではゼントラーディ人で統合軍への入隊を希望した者の姿をぼちぼちと見かけるようになっていたが、戸惑いながらも皆、それなりに周囲に溶け込んでいるようである。
 それに比べ、ドールはどこか近寄りがたい印象を人に与えるせいか、いつも一人だった。何度か士官食堂で姿を目にする機会があったが、席こそ教導隊の隊員たちと一緒なものの、誰と話をするでもなく、かえって他の隊員たちが気を使って所在なさそうにしている様子が、奇異な眺めであった。
 あの調子でうまく地球の生活に馴染めるのだろうか。アレクセイは彼女のそんな様子を見て、漠然とした不安を抱いていた。
「苦労性だな」
 そんな彼を、アランはこう評した。
「気になるんなら、ホームパーティにでも招待してやればいいんだよ。その時は俺も呼んでくれ。ボルシチに人参は入れないでくれな」
「勝手なこと言うなよな」
 友人の軽口に抗議したものの、確かに彼の言うとおり、自分は苦労性なのかも知れないな、とアレクセイは思う。が、自動販売機の前で出会ったドールは、まぎれもなくごく普通の若い女性であった。それが、まるで珍しい動物か何かのような目で見られているのがどうにも気の毒だったのだ。
「結局は似たもの夫婦なのかもな…」
 彼は妻の言葉を思い出した。他人を放っておけない性分は、実は彼自身に当てはまることであるのかも知れなかった。
「いや、それがお前のいいところだよ」
 コーヒーの湯気を顎に当てながら、アランはまた親友を評した。

 その頃、マクロス内にある統合軍総司令部では、旧ヨーロッパ地区で連続して起こった、ゼントラーディ人残存兵力による襲撃事件についての事案が会議の俎上に上がっていた。
 事件は、星間大戦後に統合軍が経験してきた数々の戦闘とは、全く性質を異にするものであった。
 破片サンプルの詳細な分析の結果、使用された武器はやはりロケット弾だという結論が出ていた。会議に同席していた統合陸軍の将校は、これを使って同様の攻撃が可能かとの問いに、大げさに手を広げ、首を振ってみせた。
「まず勘弁して下さい。といったところです。統合戦争時代にはGPSによる誘導が実用化されてましたが、今は昔の話です。間接照準射撃をしているのだとしたら、この精度は驚異ですよ」
 中堅の将校たちの中には、統合戦争時代に手を焼かされた山岳ゲリラや武装テロリスト集団を思い浮かべる者も多かった。彼らは旧式でローテクな武器を以って、オーバーテクノロジーを駆使した統合軍を翻弄し続けたのだ。
「遅れて申し訳ないですな」
 会議室の扉が開き、一人の男が入ってきた。
 男は軍人としては小柄であった。痩せて血色が悪い顔色とは対照的に、赤みの強い髪の下からのぞく鋭い眼光が印象的であった。
 彼、エキセドル・フォルモ記録参謀は統合軍の中では少将の階級を得ていたが、立場はあくまでオブザーバーであった。それは彼の持つ能力があまりに特殊なため、職務の範囲を限定せずに様々な場面での助言を求めたいという統合軍の意向からである。結果、その仕事量は膨大なものとなり、彼は四六時中、司令部の中をあちこち飛び回るはめになった。人々は慣習的に彼を「参謀」と呼んでいた。
「すみませんな。資料に目を通す時間がありませんで…」
 着席してから分厚いファイルをパラパラとめくりだしたエキセドルの姿を見て、幕僚の一人は目をむいた。重要な会議に、事前に資料も読まずに臨もうというのか。しかし直後、その幕僚はさらに目をむいた。記録参謀は無味乾燥な数字が並ぶ膨大なレポートを読みながら、同時にその場で情報分析をしだしたのである。
 まず彼は、確認された兵器類や攻撃の時系列から、この集団の輸送や兵站機能を含めたおおよその規模や部隊構成を見積もってみせ、あくまで最小限の数字ですが、と付け加えた。さらには彼らが元々は全く別の、6ないし8の部隊が寄り集まって出来たものであることを指摘した。
「重要なのは、これら別々の部隊を組織しなおして、ここまで完成された集団に仕立て上げた者がいる、という事です。さらに注目すべきは、情報収集能力の高さです。つまり、情報をいくら集めても、それらを的確に評価し総合する能力がなければ意味がありません。その点、彼らは実に適確ですぐれた分析力を持っていますな」
 ざわついた空気が静かに会議室を満たしていった。
 上位機関が失われ、敵地のただ中にあって、高度な統制と士気を保つことがどれほど困難か、地球の将校達もよく分かっていた。しかしそればかりか、自ら組織を作り上げる力をも有している今回の敵の存在は、エキセドルにとっても驚きに値するものであった。
「彼らを単なる敗残兵と捉えるべきではないでしょう。これだけのことが出来る指揮官を擁しているのです。単に物資を奪うだけが彼らの目的とは思えません」
「では、どういった…」
「それは分かりません。あるいは、彼らが来るあてのない救援を待ち、生き延び続けることを図っているのだとしたら…我々にとっても、彼らにとっても不幸です…」
 エキセドルは目を伏せた。
 彼にとってボドル基幹艦隊壊滅後の同胞たちの姿は、あくまで戦いを貫くにしろ、なすすべもなく死に至るにしろ、あるいは今回の敵のようにしたたかに生き抜こうとする者にしても、ゼントラーディの血の宿命というものを嫌がおうにも彼に見せつけるものであった。彼らの姿は、紛れもなくかつての自分の姿に他ならないのだ。

 会議の後、エキセドルは情報部長、ダグラス・フェイ少将を呼び止めた。
「少将、一つ気になる事があります」
「何でしょう?」
 フェイは、情報部という語の響きから想像されがちなイメージからは一線を画した、温厚な紳士といった面もちの人物で、このときもにこやかにエキセドルに向き直った。
「彼らは、どうやって地球の言語を知ったのでしょうな」
「……?」
 フェイはその一言で記録参謀の言わんとしている事を悟った。情報を入手する手段が何であれ、言葉がわからなければ意味をなさない。
「この星を攻撃する際、各艦隊には我々が集めた地球の兵器・戦力等のデータは送られているはずです。が、言語データはより機密度が高く、一般の分岐艦隊には伝えられてはいないはずなのですが…それに…」
「それに?」
「…暗号を解読されています」
 少将の目から、それまでの優しげな光が消え、狩猟本能に目覚めた猟犬の顔になった。
「…分かりました。調査しましょう」
 眼光を隠すかのようにフェイは制帽のつばを下げ、エキセドルに一礼して去った。
 その後ろ姿を無表情に見送りながら、エキセドルは何か苦いものが喉の奥にあるかのような感覚を覚えていた。

「アリョーシャ!」
 パトロール任務を終え、愛機から降り立ったアレクセイに向かい、待ち構えていたらしいアランがさかんに手を振っている。
 彼が指差しているのは二つ隣の格納庫で、真新しいバルキリーが6機、駐機場に引き出され、その雄姿を披露しているところだった。
「へえー、あれがアグレッサー仕様か…」
 6機の女騎士は、ゼントラーディのメカをイメージさせるオリーブ・ドラブと黒のツートンで塗装されている。そして尾翼に描かれたゼントラーディのマーク。いかにも戦闘的なその姿は、仮想敵機に相応しい。
「あれ?一機だけ単座機だぞ?」
 アレクセイが目を向けたその一機の足元に、パイロットスーツをつけた、ずばぬけて背の高い人影がたたずんでいた。
 ドールは二人の姿に気がつくと、口の端をほんの少し動かし、笑顔らしき表情を作った。前にアレクセイと話したときもそうであったが、このはにかんだような笑顔を見せるとき、あの死の匂いが消え、彼女を年相応の女性の顔にするのだ。
 笑えば普通の娘なのに…そう思いつつ、アレクセイは訊いた。
「これから飛ぶんですか?中佐」
「ドールと呼んで結構ですよ…」
 かすかな微笑をたたえたまま、ドールはうなずいた。言葉遣いは丁寧だが、人の目を真っ直ぐ見ながら話すその様子は、やはり有無を言わさぬ迫力、というより、王者の風格のようなものが感じられるのだった。
 アレクセイは、これと似た雰囲気を持つ人物を以前どこかで見た気がした。
 彼の思考をよそに、ドールは空色の髪をふわりと動かして後ろを向き、これから愛機となる自分の機体を仰ぎ見た。
「…いい機械です…でも体を慣らさないと…このマイクロンの体は、少々厄介ですから」
「厄介って?」
「あまり力が入らないのです…それに、疲れやすいし、すぐお腹も空くし…」
「……」
 二人の男が返答に窮していると、背後から野太い声がかけられた。
「どうだね、美人揃いだろう」
 教導隊飛行隊長、マクレーン中佐であった。中佐はいかにも軍人らしい、日に焼けた四角い顔に人懐こい笑みを浮かべながら、居並ぶ自慢の戦闘機を紹介した。
「広報用の写真を撮るんだよ。今日飛ぶのは彼女だけだ。明日からは我々もやっと実機での訓練に入れる…他部隊との訓練は早くとも来月ぐらいかな。楽しみにしてるよ。ばんばん撃ち落してやるからな」
「お手柔らかに願いますよ」
 アレクセイとアランも笑顔を返した。マクレーン中佐は統合軍のパイロットの中でも屈指の大ベテランの一人で、人望も厚い。大勢の熟練パイロットが戦死した今となっては、後任の指導に欠かせない人物であった。
 マクレーンは二人の肩越しにドールに合図をした。
「あ、ドール中佐、もういいよ。準備に入ってくれたまえ」
「はい」
 その途端、ドールは戦士の顔に戻った。まるで死神のマントを纏ったかのように、感情のない一個の機械となり、ラッタルを上っていく。
 誘導路をしずしずと滑り出した機体を眺めながら、マクレーンは小さくため息をついた。彼もまた、ドールの威圧的なオーラを感じていた一人だった。
「素直でいい娘なんだがね。何しろあの迫力だ…彼女の方から積極的に溶け込もうとしてくれればいいんだが、どうもそういう発想自体がないみたいでね。友達を作りなさいと言ったら、そうしたら君、友達と同期は別ですか。どうやって作ればいいんですか。と訊くんだよ…戦いばっかりやってたというのは、ああいう事なのかねぇ。死んだ娘と同じぐらいの歳なのに…」
「なにかこう…暗いというか、思いつめた感じですね」
 意外な観察力の鋭さをみせたアランに感心するように、中佐は顎をなでた。
「そうだね…ストイックなように見えて、彼女の心は不安と迷いで一杯なのだよ。ちらりと、そんな事を言っておった。全くの未知の世界に放り込まれたんだから無理もないが…一人で考え事をしていることが多いよ…何を思っているのか分からんが、話し相手もなしでは、寂しいだろうに」
 滑走路から響く轟音が一段と高くなった。マクレーン中佐は後ろを振り返ると、カメラを構えた若い男に向かって大声を張り上げた。
「ほらぁ少尉。チャンスは一回だけだぞ。ピンボケは許さんからな」
「中佐ぁ、これ、最新式のデジカメですよ。ピンボケなんて…」
 憎まれ口を叩きながら、若い士官はカメラを構えた。その先で、アフターバーナーに点火したバルキリーは猛然と加速し、一気に滑走路を蹴る。
「いきなり全開か…」
 感心するアレクセイの横で、舞い上がってゆく緑色の大鷲に冷静な視線を向けていたアランは、マクレーンに訊ねた。
「彼女は、なぜ中佐なんです」
「ん?」
「あれだけの若さで、部隊長と同じ階級なんて…」
「実はな、事情があって、明かす訳にはいかんのだ。彼女自身の希望でもあるしな…」
 どことなく曖昧に、マクレーンは上空で弧を描くバルキリーを見上げた。
「まあ、また彼女を見かけたら、声をかけてやってくれないかね。ウチの部隊はこの通り、オジサンと男やもめばっかりで…話し相手になってやりたくとも、どうもいかんからねぇ…」

* * *

 アゾニアは愛用の銃の手入れに余念がなかった。
 手早く分解し、部品の一つ一つを丁寧にウェスで拭き、また組み立てる。これは彼女の日課だった。
 傍らに腰掛けたランが、その手元を熱心な目で見つめている。アゾニアの手の動きを寸分逃すまいと、赤い瞳をくりくり動かす様子は、獲物を追いかける猫のようであった。
「これは、フェスキアの銃さ」
 長いスプリングの隙間に挟まった砂粒を落としながら、アゾニアは説明した。
「フェスキア…」
「ダチさ。装甲歩兵でな。15周期ぐらい前に知り合って、結構気が合ったんだがな…」
「その人はどうしたの?」
 半ば答えが分かっている問いを、ランは発した。
「死んださ。この星でな…今頃は、骨になってるんじゃないかな」
 アゾニアは淡々と作業を続ける。
「あたし達は、特に仲が良かった奴が死ぬと、そいつの銃をもらって、代わりに自分の銃をそいつのそばに残しておくんだ。しばらくはそいつの事を憶えておきたいからな…ま、死体とか銃とかが形になって残ってりゃだけどね。この銃だって、その前は別の誰かのだったのかも知れないな」
 きれいに拭かれ、古毛布の上に並べられた部品を、女戦士は満足げな顔で眺め回した。
「どうだ、組み立ててみるか」
「えっ、いいの?」
「ああ、バラしたのの逆順さ。簡単だよ」
 どこか人の悪い笑顔を浮かべながら、女戦士は席をあけた。
 5分後、完璧に組みあがった銃とともに得意満面の笑みを浮かべるランの手から、さりげなく銃を取り上げ、アゾニアは負け惜しみめいた一言を付け加えた。
「本当は2分以内に組み立てるもんだぞ」
 数十年、あるいは数百年にわたって戦士たちの手から手へと渡り歩いてきた銃は、よく人の手脂が馴染み、鈍い輝きを放っている。その表面についた無数の細かい傷を眺めながら、アゾニアはふと頭の片隅に引っかかっていた考えを口にした。
「なあ…お前の上官、もしかしたら生きてるのかもな…」
「え?」
 パッと輝くランの瞳を見て、アゾニアの心は砂を噛んだ歯車のような音を立てた。よどみかけた口元に平静を装わせ、彼女は話を続けた。
「今までずいぶん奴らを観察してきたが、あいつらの街にはたくさん仲間がいる…中には、マイクロンになってるのもいるみたいだ。だから…」
「ドール司令は敵に降参なんかしないよ!」
 一転して頬を赤くし、噴気を発する少女に、アゾニアの語気も思わず強くなる。
「落ち着いて考えろよ。あれだけ大勢の人間を、柵も監視所もなくてどうやって押し込めておける?もしかしたら、奴ら、特殊な洗脳かなんか…」
 ランは両手で耳を塞ぎ、激しく首を振った。
「そんな事あるもんか!アゾニアのバカッ!」
 およそ大艦隊のナンバー2らしからぬセリフを吐いて、ランは部屋を飛び出していった。仕切がわりに吊してある古毛布が埃を立てて揺れ、その向こうで何やらドサッという音と、小さな悲鳴が聞こえた後、入れ替わるようにソルダムが顔を覗かせた。
「なんだァ?ケンカか?」
「ほっとけよ」
 にやつくソルダムを横目で一瞥すると、アゾニアは憮然としたため息とともにつぶやいた。
「あいつ…どうでもいい事は忘れやがらねぇ…」
 ふんとつまらなそうに鼻を鳴らすと、ソルダムは用件を述べた。
「斥候が帰ってきたぜ。土産付きだとよ。敵の輸送車両らしい」
「許可なく敵にちょっかい出したのか!?」
 女ボスの眉がみるみるつり上がるのを、彼は余裕の表情で受け流した。
「まあ聞け。とりあえず奴らの言い分だ。一台だけでウロウロしてたのと偶然出くわしちまったんだそうだが、どうする?」
「分かった。後で行く。とりあえず中を調べさせろ」
「了解…」
 ソルダムは口の端を片方だけ吊り上げ、部屋を出ようとしてもう一度女ボスを振り返り、続きを促すような素振りをした。その視線と目が合ったアゾニアはしかめ面をし、そっぽを向きつつ不機嫌に宣言した。
「斥候隊の奴らは、当分便所係だ」

「甘いぜ、こりゃ」
 恐る恐るカップに口をつけたケティオルは、とたんに顔を輝かせた。
 その言葉に周囲は色めきたった。戦利品とは民間の飲料会社のタンクローリーであったのだが、当然、彼らはそのような事は知るよしもない。
 その中身がどうやら口に入れる物らしいと分かった一同は、その毒見役を前回、果敢に謎の粉に挑んで敗北したケティオルに押し付けたのだった。
 至福の表情のケティオルが再びカップを口に運ぼうとした瞬間、いらつくドルシラの罵声が浴びせられた。
「ちょっとケティ!いつまでも自分ばっかり味見てんじゃないよッ、美味かったらさっさとアゾニアに渡しな!」
 ケティオルは慌てて戦利品をアゾニアに差し出した。女ボスはちらりとドルシラを睨むと、しばらく舌の上で転がすように検分した後、全員で分けるよう命令した。
 ボスの許しを得て、うずうずしていた兵士たちは一斉にタンクに飛びついた。その様はさながら酒樽を取り囲む海賊の群であった。次々と開けられた穴からこぼれだす飲み物がカップに注がれ、兵士達の間を飛び回る。
 今まで全く知る事のなかった、甘い味はたちまち彼らを魅了した。
「ホントだ。うめ~ぇ」
「俺にも回せよー」
 興奮のるつぼのただ中、自分の取り分を確保したソルダムは、ハゲタカの祝宴を背景に映しながら、目だけは女頭目の姿を追っていた。彼の視界の中で、アゾニアはカップを片手に一人、物陰へと移動していく。そして、大きな岩の根元に座っている赤い髪の人物の前にしゃがみこんだ。
 彼の方からはその表情を確認できなかったが、一方のアゾニアはしきりに愛想笑いを作り、何やら話しかけながらカップを相手に手渡そうとしている。
 何度かの押し問答の後、やっとそれを受け取った相手に満足げな笑顔を向ける女戦士を見ながら、ソルダムは自嘲にも似た深い息をついた。
 名も知らぬ飲み物の、甘さばかりが口に残った。

 民間人の犠牲者が出たことで、統合軍もいよいよ速急な対応を迫られることとなった。
 パトロール部隊のいくつかが、西部方面隊を統括するニュー・バルナ・シティに移転となり、大規模な索敵活動が開始された。が、地形は大戦前とは著しく変わり、巧みに潜む目標を捜し出すことは極めて困難であった。
 そればかりか、統合軍の必死の捜索を嘲笑うかのように、その後もたびたび襲撃事件は起こった。
 狡猾で極めて用心深く、行動の素早いこのゼントラーディ人グループを、いつしか統合軍の人々は「狼旅団」と呼ぶようになっていた。
コメント
この記事へのコメント
結構コメントを貯めてしまったので、迷惑・プレッシャーかな?と思い、控えておりました。解禁嬉しいです。

そーですか。ラブも少し…。「誰と誰?」と目の色変わってしまいました。
エキセドル参謀だ~!初TV登場人物?格好良く描かれてますね。彼のすごさがやっと具体的に分かった気がします。
ランの尊敬する上官は、なんとドールだったのですね。びっくりしました。
ゼントラン達がジュース飲む場面。TVでも、彼らの文化遭遇は、どこかコミカルですよね。
2011/07/19(火) 17:11:27 | URL | にゃお #nHTGuFzo[ 編集]
●にゃおさん
いつでも気軽に遊びに来てくださいね。
あ...ラブの方は、そう大したモンじゃないです。きっと。あんまり期待しないでくださいね(笑)
エキセドルさんは今後も活躍しますのでご期待くださいv
ゼントラ人にウケがいいのは甘いものだろうと思っています。味覚がお子ちゃま&必要カロリーが多いので。
こんなものの味を覚えちゃったら。後戻りできないですよね...
2011/07/21(木) 00:29:02 | URL | 作者。 #-[ 編集]
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