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TVアニメ「超時空要塞マクロス」の二次創作を公開しています。
§29 死線
「これが何か分かるな」
 それは、ドール・マロークスが第109分岐艦隊の司令に就任して、一周期ほど経った頃のことであった。
 補給のため基幹艦隊へと戻ったドールは、上司である第四戦域軍司令官、アデット・ジオールの呼び出しを受けた。
 ジオールは基幹艦隊の幹部達の中でも、最実力者の一人であった。長く美しい銀髪、冷たい光を放つ金色の瞳。ある意味、人間らしさをどこかに置き忘れたかのような、彫刻のごとき白い横顔。
 そして、基幹艦隊の中でこの地位にまで上りつめたという事実が、彼女がこれまで数え切れないほどの敵と、時には味方との戦いに勝利し続けてきたことを物語っていた。
 端麗な外見とそれに内包した野心、それはまるで触れずとも切れる研ぎ澄まされた刃であった。
 また、彼女はゼントラーディ人の中では珍しく、中長期的な戦略眼と、自分達ゼントラーディ人自身を客観的に見る目を持っていた。
 その金色の瞳が見据える「何か」は、ドールにはとても理解し難く、理解し難いからこそ畏れ、そして尊敬していた。
 ジオールはドールを自室に招き入れると、一つの小さな金属片を見せた。小指の爪ほどの、正方形に近いプレートで、やや鈍った金色の光を放っていた。
「生体メモリーチップですね」
 それは記録媒体の一種で、記録参謀が情報のやりとりをする際などに使用されるものであった。特段、珍しい物ではない。が、彼女が今目にしているそれは、ずいぶんと年季が入った物のようであった。
「そうだ。が、それは入れ物にすぎん。それの本体はすでに取り出してあるが、こういうものだ」
 ジオールはデスクのパネルを操作した。小型の浮遊スクリーンが浮かび上がり、奇妙な小物体群を映し出す。互いに触手のようなものを伸ばして繋がったり、離れたりしていて、まるで生き物のようであった。
「拡大映像だ。これは人間の脳神経細胞ときわめて似た構造を持っている。人工的な脳細胞とでも言うべきか…基幹艦隊の中央データベースも、これとほぼ同じものだ。規模はずっと大きいがな」
「はぁ…」
 ゼントラーディのテクノロジーは、その祖であったプロトカルチャーの技術を反映して、バイオ分野に優れたものであった。生体部品とも言うべきものが多く使われ、マシンと人体が直接、情報のやりとりをすることを可能としていた。
 バトルスーツ類が操縦者の体の一部であるように動くのも、記録参謀がデータベースへの情報の読み書きを行い、共有できるのも、この技術のたまものである。
 ジオールはチップを手でかざしながら、少女のような、悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「これはな、漂流していた我軍の戦艦から発見されたものだ。少なくとも、十万周期は経っている…」

* * *

 アフリカ大陸の地図で言う右上、かつては大河、ナイルが流れていた地帯を、南へとひた走るゼントラーディの一群があった。
 指揮車代わりの通信用車両と、二両の輸送用ポッドを中心に、十数機のバトルスーツが護衛する小集団である。
 狭い通信車の中には三つのオペレーター席がコの字形に並び、その後方の壁沿いに備え付けられた、荷台とも座席ともつかないでっぱりにラン・アルスールは神妙な面持ちで膝を抱えるように座り、通信士官のクリエラがその向かいに座っていた。
 ランがアゾニアの本隊に戻ると言い出した時、周囲は一旦は止めた。統合軍の捜索の目が格段に厳しくなったし、アゾニアもいずれこちらに来るだろうから、それまで待つ方がいいとアグルを始め皆言ったのだが、彼女は決心を変えなかった。
「アルタミラが飛べるようになるまであともう少しかかる。アゾニアはきっと敵の目を引き付ける行動に出るだろうから、そっちを手伝いたいんだ…」
 記録参謀の言う事はもっともで、アグルはくれぐれも用心してくれ、と念を押しつつ、彼女らを送り出したのであった。
「もうすぐ山岳地帯になる。そうしたら休憩するよ」
 通信機から、バトルスーツを駆るヴェルティンカの声が聞こえた。
 彼女はこれまで何度もアルタミラと本隊の行き来をしている、優秀な護衛である。いくつものルートを持ち、地理については地球人より熟知していた。

「参謀、大丈夫ですか…?」
 クリエラは対面に座るランに声をかけた。車内の薄暗さを割り引いても、今日の記録参謀はいつにも増して顔色が悪いように感じたからだ。
「大丈夫…」
 実のところあまり大丈夫ではなかったが、今日の体調はまだましだった。それよりも彼女を思い悩ませていたのは、アルタミラを出発する直前にあった、ある出来事であった。
 ブリタイ艦へ潜入していた工作員五名のうち、二名が戻ってこなかったのだ。
 その者たちは、自分の意思で残ったのだという。
 すごすごと戻ってきた残りの三人に、アグルは厳しい表情で問いただした。
「重大な裏切り行為だ。なんでそいつらを見逃した」
 たとえ仲間に手をかけることになっても、阻止すべきではなかったのかということである。それに対し、戻ってきた工作員たちは黙って俯くばかりであった。
 彼らも懸命に説得したのだ。が、二人の意思は固かった。
「アルタミラの事は、死んでも言わない。しばらく他の街にでも隠れているから、お前達は行ってくれ」
「お前ら、裏切者になってもいいのかよ?」
 食い下がる仲間に対し、彼らは静かに言ったのであった。
「俺には、ここの人たちが『敵』には見えない…」
「……」
 ただ外側から観察するのでなく、じかに地球人と接してみて初めて感じ取れることもある。ここにいた数ヶ月の間に彼らが体験したことは、彼らの価値観を根底から揺さぶるには充分すぎた。
 「敵」とは、憎むべきものではなかったか。
 すべての地球人が彼らに対し親しかったわけではない。なのに、何かが、彼らにそう感じさせたのだ。
「残って、どうする気なんだ…」
「何か、新しい事をしたい…ここならそれができる。許される…」
「……」
 結局、三人は仲間を説得することを諦め、部隊へと戻った。
 二人の同胞の言わんとした事は何となく理解はできた。だが、ここに残りたいとまでは思わない。この世界は雑多すぎるのだ。秩序正しいゼントラーディの世界の方がいい…。

* * *

 突如、通信機が沈黙を破り、ざらついた音を発した。
「敵だ!!」
「えっ」
 ランは腰を浮かせ、レーダーを見た。十個ほどの光点が後方から近づいている。
「……」
 緊張に唇が震えた。今、彼らがいるこの場所は、遮蔽物がほとんどない平坦な荒地である。この小部隊では空からの攻撃に対し、とても持ちこたえられない。
「急ぎすぎたかね…」
 通信機から、舌打ちの音と共にヴェルティンカの低く唸る声が聞こえた。
 部隊の移動は通常、敵の目を避けて夜に行われるが、今回の行程は急ぐため、様子を見ながら日中も行動していた。
 統合軍のマークの薄いルートを選んだはずだが、敵の捜索は思っていたよりさらに厳しくなっていたようだ。
「畜生、もう少し先に行けば、マシな隠れ場所があるんだけど…」
 通信車の操縦手の無念そうな声が聞こえた。
「速度上げろ!!」
 ヴェルティンカの声が飛んだ矢先、激しい爆音が襲い来て、通信車は大きく揺れた。
「メイラがやられたぞ!!」
「散開しろ!」
「指揮車を守れ!!」
「止まるな!!」
 通信機を通して、いくつかの怒号が同時に聞こえた。
 部隊はスピードを上げた。が、しょせん航空機のスピードにはかなわない。
 あの耳にへばりつくような嫌な音と共に、激しい振動が車体を揺らし、その度ランは必死に手すりにしがみついた。
 通信車のキャビンには直接外を見る窓はなく、レーダーといくつかのモニター画像が外の様子を伝えるのみである。襲い来る轟音と機械類の発する警告音、スピーカー越しに飛び交う怒鳴り声が、この小部隊の状況を物語っていた。
 リガード隊がミサイルを放ったが、所詮リガードに装備してある対空ミサイルは気休めである。
 地上すれすれを飛んでミサイルを振り切ると、敵の航空機は旋回して再び攻撃態勢に入った。
「散れ!スピード落とすな!」
 攻撃を避けるため、通信車は右へ左へと車体を揺らす。爆音が至近で響き、車体が大きく跳ね上がった。
「もう少し行けば山地だ。なんとかそこまで飛ばせ」
 部隊のすぐ脇を、ガウォークに変形した敵がすり抜けた。攻撃と同時に素早く上空へと飛ぶ。避けそこなったリガードが脚を砕かれ、大地に崩れ落ちた。巧みな空と地上からの連携攻撃に、思う方角へ進むことすら難しかった。
 行く手を塞ぐように、バルキリーが変形して降下してくる。
「くそっ、空を飛べるモンがありゃね…」
 ヴェルティンカの無念のつぶやきは、アゾニア軍団の、如何ともしがたい弱点であった。
 ついに部隊の足が止まった。
 バトルスーツ群は通信車を守るように陣形をとり、応戦を開始したが、劣勢は明らかであった。すでに護衛のリガードもバトルスーツも、半分以下に撃ち減らされている。
 ランは身じろぎもせず、レーダー画面を凝視した。戦いとは所詮数である。悲しいことであるが、ここでは自分の出る幕はない。この狭い通信車の中で、機械類の破片と共に吹き飛ばされるか、ビームの熱に焼かれるか。それは今この瞬間かも知れない。否応なく、心拍数が上がっていくのが感じられた。
 ふと一瞬、ランの脳裏を懐かしい人の顔がよぎる。
 それに気付いた彼女はひどく戸惑った。今、自分は死にたくないと思ったのではないか。そんな事はあってはならない事なのに…。
 その時、通信機からヴェルティンカの意外なほど落ち着いた声が聞こえてきた。
「参謀、あんた頭いいんだろ。なんとか、奴らの気を散らせないか?」
「気を散らす?」
「一瞬でいい」
 何か考えがあるのだろう。その冷静な声が、ランにも平常心を取り戻させた。
「……」
 考える時間はほんの一瞬であった。ランはやおら立ち上がると、突然、通信車の上部ハッチへと続くラッタルに手をかけた。
「アッ、参謀!!」
 クリエラが叫ぶ間もなく、ランはハッチを開け、上体を勢いよく外に乗り出した。

 包囲を完成させつつあったバルキリー隊の搭乗員たちは、敵の中央にいる小型車両のハッチが突然開き、一人の人物が姿を現したのを見た。
 そのゼントラーディ人はかなり小柄で、地球人の目には子供に見えた。ハッチから身を乗り出すと、ヘルメットをとり、勝利を確信した地球人達をキッと睨みつける。赤い髪が短いながら風に揺れるのがはっきりと見えた。
「あっ!!」
 追討部隊の指揮官、グエン・バン・ミン大尉は、先の捕獲作戦に参加していた一人である。
 突然、敵の前に生身の体をさらした赤い髪のゼントラーディ人少女が何者であるか、すぐ気がついた。
「記録参謀だ!」
 まさかこの別働隊と思しき小部隊に、こんな大物がいるとは思ってもいなかった地球人たちの目は、その少女に釘付けになった。

 その時、グエン大尉の視界を何か黒いものが塞いだ。
「あがぁっ!!」
 身構える間もなく、彼のバルキリーを激しい衝撃が襲った。狭いコックピットの中で、遠心力とベルトが彼の体を逆方向に引っ張り、翻弄する。
 ヴェルティンカは、ランが命がけで作ったチャンスを見逃すような事はしなかった。
「すまん、参謀」
 その言葉は、多分ランには届いていなかったろう。その瞬間、彼女のバトルスーツはバーニアノズルの推力を最大にして、敵の指揮官機に飛び掛った。
 二機のメカはもつれあうように砂漠の乾いた地面を転がり、立ち込めた砂煙の中から、金属のこすれあう不愉快な音が響いた。
「隊長!」
 部下達が我に返り、ガンポッドを構え直すのに一瞬ほどしかかからなかった。が、視界を遮っていた砂煙が薄らぎ、目の前に現れたのは、彼らの指揮官機を羽交い絞めにして立つ敵機の姿であった。
「隊長…!」
 慄然とする光景に、部下の一人は絶句した。敵バトルスーツの右手が、バルキリーの操縦席がある腹のあたりに食い込んでいる。
「隊長!」
「隊長!返事をしてください!」
 必死に呼びかける部下たちの耳に、かすかなうめき声が聞こえてきた。
「隊長!」
「ウゴクナ!!」
 バトルスーツから、凄みの効いた女の声が響く。
 ヴェルティンカは地球人の弱点をよく知っていた。計算どおり、地球人たちの動きが止まった。

 自ら敵の目を引き付ける役目をしたランも、ヴェルティンカのこの行動は予測していなかった。クリエラと兵士の一人にハッチから引っ張り下ろされて、やっと事態を飲み込んだところに、通信機から声が聞こえた。低く、落ち着いた声だった。
「…早く行きな。長くはかせげない」
「ヴェル…」
 ヴェルティンカは最も効率的なやり方を採ったのだ。この状況を打破して、記録参謀を本隊に送り届けるという任務を達成するために。
 冷たい汗が一筋、クリエラのこめかみを伝って流れ落ちた。今、この中でランを除き最先任は彼女である。盟友の覚悟を察した以上、今度は自分が覚悟を決めなければならない。
 かすれた声で、クリエラは命令した。
「…速やかにこの場を離れる!」
 包囲の態勢のまま動けずにいる地球人たちと睨みあいながら、部隊はじりじりと後退した。そして、ある程度離れたところで向きを変え、猛スピードでその場から去っていった。
 残されたのは、一機のゼントラーディのバトルスーツと、それを遠巻きに取り囲むバトロイドの一群のみである。
 仲間達が地平線の向こうに消えるのを確認すると、ヴェルティンカは周囲を睨みまわした。
「ワカッテルな地球人、仲間が攻撃を受ければ、コッチはスグ分かるぞ!」
 軽く手に力をこめる。バトルスーツのフィードバック回路を通じて、ひ弱な地球人の柔らかい感覚が伝わってきた。
「う…ぐ…」
 血を含んだようなうめき声がインカムを通して隊員達の耳に届く。
「や、やめろ!!」
「なんて奴だ…」
 地球人達は歯噛みした。
 これまで、ゼントラーディ人は人質を用いることはないとされてきた。が、それは彼らの世界では人質が用をなさないからに過ぎない。そんな彼らに人質の有効性を教えたのは他でもない、地球のテレビニュースや映画であった。
「さぁて地球人ども…根比べだ」
 ヴェルティンカは軽く唇をなめた。

* * *

 時刻は日没を過ぎていた。
 まさに墨を流したような、すぐ隣にいる者の顔さえ分からない闇。人工の明かりに慣れきった現代人には実感し難いが、本来の夜とはこういうものだ。
 その闇の中、ただ一機のゼントラーディのバトルスーツと、バトロイド十数機が対峙し、いつ終わるともない睨み合いを続けていた。
 バトルスーツの手は、抱え込んだバトロイドのコックピットを突き破り、搭乗員の体を鷲掴みに捕らえている。これ以上少しでも力を込めれば、たちまち圧死してしまうだろう。
 バルキリーのパイロット達は、上官の体力がいつまでもつかという焦りに追いたてられながら、説得の言葉を繰り出した。
「もう仲間たちは遠くへ逃げおおせた頃だろう。もういいだろう。人質を放せ。そうすれば殺しはしない!」
 しかし、当然のごとく相手からは沈黙しか返ってこない。
 最も説得し難い相手である。なにしろ、もとより生き延びようとは思っていないのだろうから。
 だが地球人達も、説得によって人質を解放してもらおうなどという、甘い考えは端から持っていなかった。
 一見、状況は何も変化がないように見えるが、この闇の裏側では事態の打開に向け、着々と準備がなされていた。

「早くしろ!人質の体力がもたないぞ」
 ゼントラーディのバトルスーツを囲むバトロイドの一機。その足元に暗視スコープをつけ、赤外線吸収素材の特殊装備に身を包んだ兵士が二人うずくまっていた。
 手早く装備品の確認を済ませると、黒く塗りつぶした顔を互いに見合わせ、一人がアンカーランチャーを上方へ向けた。
 撃ち出されたアンカーはワイヤーを曳きながら狙い通り、バトロイドの肩部の隙間に引っかかる。
「いいな!大尉の命はお前にかかってるんだ!気合入れて行けよ!」
 上官の言葉に、無反動砲を担いだその兵士は緊張した顔で頷いた。
 砲にはHEAT弾(対戦車弾の一種)が一発、装填されている。
 彼らは最寄の駐屯地から派遣された、対テロの特殊訓練を受けた精鋭であった。人質が取られたとの連絡が入るやすぐ、この砂漠へ飛んだ。敵に気付かれぬよう、上空一万メートルの高高度からパラシュートで降下し、20キロの距離を踏破してここまでやってきたのだ。
「狙うのはカメラ・アイの下寄りの部分だ。ちょうどそこに搭乗者の顔がある」
 バトルスーツの断面図を広げて最終確認をする上官に、兵士はもう一度頷くと、ワイヤをよじ登っていく。
 バトロイドのバックパックの上、人間でいえば首の後ろあたりにたどりつくと、彼は狭いそのスペースに腹ばいになり、なるべく体はバトロイドの首に隠れるようにして、慎重にランチャーを構えた。
「当たれよ…」
 距離は約150メートル。ランチャーの性能からいけば全く問題はないが、絶対に失敗は許されない。一発で確実に敵を即死させなければ、人質は握り潰されてしまう。そのためには厚い装甲がなく、その内側に搭乗者の顔面があるバトルスーツの頭部を正面から狙うしかなかった。
 バトルスーツは時おり、首を左右に動かして辺りを見回す動作をする。気を抜いてはいないぞという意思表示である。しかし、その動きはどこか機械的で、当初に比べればわずかではあるが緩慢であった。敵も疲労がたまっているのだろう。
 辛抱強く、兵士はタイミングを計った。
(よし、次だ…!)
 再び首がゆっくりと動き、兵士の待ち構える方へと向いてくる。
(もうちょい、もうちょい…)
 暗視スコープの照準ゲージが、正確にバトルスーツのカメラ・アイに合わせられた。
「行け!」
 暗闇の中を一条の光が走ったのは、ほんの一瞬であった。ロケットモーターの空気を切り裂く音と、破裂音とがほぼ同時に鳴り響き、その瞬間だけ、周囲が強い光に照らされてバルキリーの足元に鋭い影を作り、砂漠は再び漆黒の暗闇へと戻った。

* * *

 なんとか合流地点まで逃げ込んだランの一行は、そこで夜半まで待ったが、ヴェルティンカが現れることはついになかった。
 暗いうちに移動しなければまた見つかる。彼らはアゾニアの本隊と合流すべく南へと向かった。
 薄暗い通信車の中で、ランはまた膝を抱えるように座り、ぼんやりと視線を床に落としていた。
 あの砂漠で出会った地球人の女の声が、耳にまとわりつく。
――仲間が死んでいくのを見るのは、嫌じゃないの?
「――うるさい」

* * *

 後日、この戦闘に関する報告を受けたエキセドルは、壁に貼った大きな世界地図を指でなぞりながら一人ごちた。
「南へと向かっていた…」
 戦闘があった地点から南、アフリカ大陸東部は、現在、"狼旅団"が潜伏しているのではないかと予測されている。
「では、彼らはどこから来た…?」
コメント
この記事へのコメント
エキセドル参謀が、アゾニア達が修理しようとしている艦はアルタミラだと気付きそうですね。ここから先は時間の勝負でしょうか、少なくとも、統合軍にとっては。
2011/07/25(月) 19:43:56 | URL | 蚕霖軽虎 #dZ0847IM[ 編集]
●蚕霖軽虎さん

お待たせしてごめんなさい。
見捨てないでいて下さってありがとうございます。
いよいよ、終盤に入っていきますです。双方にとって時間との勝負です。
でも、書く方はまだまだ時間がかかりそうですが...^^;
2011/07/30(土) 11:48:53 | URL | 作者。 #f4U/6FpI[ 編集]
■拍手コメントお礼
●豪渓仙人さん
ありがとうございます。
カムジン親分も「地球人のマネして」人質を取っていましたね。やはりゼントラ人は戦いに役立つことなら何でも取り入れていくのだと思います。
拙い文章力ですが、ドライな彼らの生き様を描けたらなぁ..と思ってます。
2011/08/21(日) 22:56:38 | URL | 作者。 #f4U/6FpI[ 編集]
読み終わってしまいました
いつものように一気読みなどせず、じっくり拝見しておりましたが、いつかは終わる物ですね…シクシク。

らんこさんの、ゼントラ視点から見た世界とか、科学的・ミリタリー的・ゼントラ的な用語と解説が、とても面白かったです。きっちりした文体の中に、やや難しい素敵な漢字(コレが好きなんです)が散らばり、
私の文字萌え心をくすぐられました。

カムジン&ラプ・ラミズが閣下の下で、以前のような関係でいることが嬉しいです。この2人がくっ付くにしても、TVは唐突過ぎですよね。このカップルで、いつかSSを書きたいなーと思っています。カムジンが地球文化を楽しんだり、女の子にキャーキャーされているのがいいです。多分本当にこんな感じかな?と思います。

未沙さん!素敵なお姉さん風ですね。らんこさんはコメントで「さん」付けなので、新鮮です。名前だけも、輝が出れば満足です。

エキセドル記録参謀、カッコかわいいかったです。彼はきっと地球文明発達に、功績を残していると思います。

結構以前のコメントで出た、ボール状の草は「タンブル・ウィード(回転草)」と言う、西部劇の常連です。種子をまき散らす為に茎が折れて、原野を転がるそうです。TVでやっていたので、ちょっと調べてみました。今更でしたら、すみません。

ランの失われた記憶はなんなのか、アゾニアは地球文化にどう変えられていくのか・いかないのか…美味しいところで「つづく」です。

コミケで他のマクロスブロガー様とお会いされたようなので、もしかして…とブログに訪問したら、片鱗が記事になっていましたね。こちらを時々楽しみながら、気長に続きをお待ち申し上げております。

長々、文章を失礼致しました。では!
2011/08/27(土) 10:55:38 | URL | にゃお #nHTGuFzo[ 編集]
●にゃおさん
読んでいただきありがとうございます。
輝×未沙でもないのに、お気に召していただいて嬉しいです。
TVのカムさん&ラプさんは、絶対なんかヘンなんですよね...ラプさん、人格まで激変わりだし.....
なので、私なりに「きっとこんな感じ」というのを書きました。
未沙さんは...なんか「さん」付けしちゃうんですよね。輝は「輝」ですが(笑)

あまりに超ゆっくり更新なので、お待たせすると思いますが、これからも気長にお待ちくださると嬉しいです。

>回転草
ただの枯れ草ゴミかと思ってました.....^ ^;
2011/09/01(木) 00:03:40 | URL | 作者。 #f4U/6FpI[ 編集]
うーん、深いです・・
ランとドールってゼントラーディと地球側の象徴のように見えてきます。
歩み寄れるのかな。
再会して欲しいけど、できないんじゃなかろうかとちょっと思い始めたりして。。
続きを楽しみにしています。
2012/02/09(木) 08:17:12 | URL | COW #cxt481Xg[ 編集]
●COWさん
来ていただいてありがとうございますー。
そうですねぇ。ドールの地球人を見る目は結構冷静で、スパイ3人組とかみたいに「地球の文化LOVE~」ではないんですね。
一方のランも、地球人を嫌っていながらも、色々な「なぜ?」をもって観察は続けています。
二人ともに、何か得るものがあるのではないかと...
お待たせしてスミマセンが、続きをお待ちくださいませm(_ _)m
2012/02/20(月) 01:59:16 | URL | 作者。 #f4U/6FpI[ 編集]
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